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友達に言われたことをブログのタイトルにしました。

ミュージカル「ファントム」@梅田芸術劇場

2023年8月5日(土)

 17時半から梅田芸術劇場でミュージカル「ファントム」を見た。ガストン・ルルーの小説「オペラ座の怪人」を原作にしたミュージカル。脚本はアーサー・コピット、作詞作曲はモーリー・イェストン。劇団四季がロングラン上映しているものはアンドリュー・ロイド・ウェーバー作品なので、ファントムにラウルは出てこないし、続編のつくれないオチがついている。

ミュージカル『ファントム』2023年公演 ― 梅田芸術劇場

 わたしは宝塚雪組公演「ファントム」で望海風斗さんと真彩希帆さんコンビを初めて見てだいきほ沼にハマったので、東宝版の「ファントム」でクリスティーヌを演じる真彩希帆さんを見られるのを楽しみにしていた。


 ゆえあってオペラ座の地下に棲みついている、音楽の才能は豊かだが人との交流が極端に不得手な男エリック(通称ファントム)は、クリスティーヌという女性の歌声に一聞き惚れし、彼女をオペラ座のスターにするべくレッスンを持ちかける。クリスティーヌは才能を開花させ、オペラ座で主役を演じるまでになるのだが、オペラ座プリマドンナ・カルロッタはそれが気に食わず、彼女に毒を盛る。エリックは激怒しカルロッタを殺害、捜索の為に地下に足を踏み入れた警官たちをも次々と手にかけてしまう……みたいな話。この他に、割と善良なクリスティーヌのパトロン、シャンドン伯爵と、エリックと懇意の仲であるオペラ座の前支配人キャリエールが重要人物として出てくる。


 ファントムを演じるのは加藤和樹。宝塚版の10倍くらい挙動不審で、早口で喋り方が幼くて、そこはかとなく怖かった。望海風斗ファントムは精神年齢高校1年生くらいに見えたのだけれども、和樹ファントムは小学校低学年くらい。キャリエールとの対話シーンでの幼さは痛々しいほどで、カルロッタに対する仕打ちは純粋故に激しかった。

 クリスティーヌ役の真彩希帆は宝塚版から更に磨きをかけたピアニッシモが冴え渡っていて、彼女の歌の為ならなんでもするという人がいるのに説得力があった。東宝版では、クリスティーヌ役の演者がファントムの母親ベラドーヴァも演じるのだが、迫真のダンスを見ることが出来た。

 カルロッタ役の石田ニコルは、ミーンガールズのクイーンビー役を更に強烈にしたキャラクターをコミカルに演じていて面白かった。歌唱力がある人があえて下手な歌を汚い声でうたうの大好物。

 キャリエール役は岡田浩暉。キャリエールはこの悲劇の元凶をつくったキャラクターなので演じるのがすごく難しいと思うんだけれども、「You are my own」ではまんまと泣かされてしまったのではまり役だと思う。ドリームガールズでもそうだったけれども、岡田さんは駄目なひとを演じさせたら天下一品。

 キャストはみんな良かったのだけれども、演出は合わないところが多かった。ファントムを、長年の軟禁生活によって精神は子どものまま発達していないが、体は180cm越えの成人男性であり、衝動の強さも人一倍(癇癪を起こして舞台いっぱいをかけずり回ったりしていた)というキャラクターにしているのがひっかかってしまった。カルロッタを滅多刺しにしたり、警官達の喉を裂いていくシーンでは、ファントムに同情するというより恐怖が勝ってしまった。そうすると、キャリエールが主張する(自分としてはできる限りのことをやっている)ことにも一理あるように思えてきて、彼の罪が薄くなるような感じがした。それは話の筋的にちょっとまずいんじゃないかと思った。

 客席から役者が出てくる演出が多用されていて、それは別にいいのだけれども、メインキャストのファントムとキャリエールが、一階の客席内で台詞の応酬をしだしたので驚いた。わたしは2階席で見ていたのだけれども、台詞が聞き取りにくくてストレスに感じた。客席と舞台上とが繋がっている感を出して没入感を高めたいのだろうなという意図は分かるのだけれども。イマーシブと内輪受けは紙一重だし、客席降りにはレア感が必要不可欠だと思うのだ。

 2幕頭で客席のライトが明滅したのち客席暗転にするところや、ベラドーヴァの抱いていた赤子が粉砂糖みたいな儚さで消えるところ、1幕終わりのファントムの登場シーンなんかは好きだった。カーテンコールの最後に、加藤和樹と真彩さんが並んでいるところに城田優が飛び込んでわちゃわちゃやっていたのだけれども、小学生男子が3人でなんかやってる感があって可愛かった。