点Pくらいよく動く

友達に言われたことをブログのタイトルにしました。

柚香光 tableau 感想というか見た日の日記(取り急ぎ)

2024/9/15

 

13:00
 柚香光1st Soloコンサート「TABLEAU」をシアタードラマシティの10列目サイドブロックで見た。今回の公演は配信こそあれどメディア化しないことがアナウンスされているので、ゆっくり時間をかけて感想を書こうと思うのだが、本当に盛りだくさんだった。ピアノの弾き語りをしながらタップしたり、赤いドレスを着てフラメンコを踊ったり、そりゃ二曲やったらMCはさむのも無理ないわってくらい踊りっぱなしの2時間だった。特に、シンガーの直さんと開さんが歌うsiaのchandelierにあわせてコンテンポラリーダンスを踊ったシーンが胸に迫って泣いた。あの曲は希死念慮を歌ったものだし、フラメンコは抑圧への抵抗から生まれた踊りだし、他の曲の前振りでも人間の尊厳について話していたりしたし、肚に抱えているものがたくさんあるんだろうと想像してしまった。表現者としての柚香光を見せつけられて今後が楽しみになった。小林香さんに感謝せねばなるまい。
 この回では柚香さんの飲水シーンをオペラグラスで見ていたら笑って手を振ってくれた。バチバチに踊りまくるひたすらかっこいい面と、ゆるっとした面を同時に見られてありがたすぎる。

 

17:00
 柚香光1st Soloコンサート「TABLEAU」を22列目センターブロックで見た。客席から話を振るタイプの人とは気が合わないなと思う。

 

2024/9/16

11:30
 ドラマシティ前でチケットを受け取ってからファミマで即効元気を買って10秒で飲んだ。

13:00
 柚香光1st Soloコンサート「TABLEAU」を20列目サイドブロックで見た。通路側の席だったのだが、開演直前に花組の見ればすぐわかるジェンヌさんたちがその通路を通って席についたので場内が騒然としていた。アンコール曲の客席おりでは、私の4列目前くらいの位置まで柚香さんが来てくれ、カッコ良すぎてビビる。ありがたいことに3回も見てしまったが良いコンサートだった。終演後、一番近い出口から出ようとしたら中から拍手が聞こえたので、また柚香さんが出てきたのかなと思ってホールに戻ろうとしたら、おぶちゃんがこっちに向かって歩いてくるところで真正面から顔を見てしまい、えっ顔きれいすぎ……?てか拍手そういうことか!と思ってささっと避ける。ジェンヌさんを5人も至近距離で見てしまったのでご利益がありそう。

贔屓が退団してから1週間で復活した。

わたしは元宝塚歌劇団花組トップスター柚香光さんのファンである。ライブビューイングでポーの一族を見て柚香さんを知り、トップスターになられた時に、地方都市在住ではあるがせめて大劇場公演は一つの演目につき一回は生で観劇したいと思い、できる範囲で観劇をしてきた。

去る3月24日、柚香さんが宝塚大劇場を卒業される日に、最後だから記念に一通だけと思ってしたためてファンレターを投函したところ4月下旬に私設ファンクラブの入会案内が届き、最後だからいったれと勢いで入会。フェアウェルパーティのサテライト会場に潜り込むことができた。自分のできる範囲でやれることはやったので、すっきりした気持ちと、ご卒業後に芸能活動をされないとしたらこれで見納めなんだなあという気持ちがないまぜになり、26日の翌日からどこかぼんやりと過ごしていたのだが、ご卒業から1週間が経った今日、9月に柚香さんのソロコンサートが開催予定だと発表された。

早ッッッッッ!

えっマジで?大阪は星風まどかさん、東京は華優希さんがゲスト?なにそのご褒美? えっもっとおやすみしなくて大丈夫?でもでもめちゃくちゃ嬉しい!なんてこったなんてこったなんてこった!……とまあこんな感じ。感傷にひたる間も与えてくれないだなんて、なんて贅沢な悩みだろうか。また気持ちを新たに徳を積んで、なんとかチケットを手に入れたいところである。

ところでわたしは2021年6月から、日記本専門書店「日記屋 月日」のオンラインコミュニティ「月日会」にて日記を書いている。以下は、そこに投稿した5月26日分の日記。1週間前の自分に、わりと早く音沙汰があるよと教えてやりたい気持ちでいっぱいだ!

 

2024年5月26日(日)くもりのち晴
 6時頃起きる。寝不足が極まっていたので、機内では気合を入れて寝た。11時ちょっと前に羽田について、浅草線で宿へ移動。(図書館ではない)トイレでデニムパンツから白いパンツに着替え、白シャツの上からフェアウェルウェア(白の袖無しダブルコート)羽織り、全身真っ白な人になってからフロントに荷物を預けに行くと、特に何も伝えていないのに「観劇からのお戻りは何時ごろですか?」と尋ねられた。さすが阪急系列の宿。他にも白い服の人たちが泊まっているのだろう。
 去年の9月末に東京に来たときにも泊まった駅だったので、乗り継ぎルートをなんとなく覚えているらしく、体が勝手に動くのが面白かった。12時ちょっと前に日比谷に着く。東京宝塚劇場前はまさに白って200色あんねん状態。自分と同じく全身真っ白な人がたむろしていて熱気がすごかった。クリエの前あたりで、ASさんらしき人を見かけたが、人が多すぎてすぐに見失ってしまった。
 劇場前の写真を撮ってから、TOHOシネマズ日比谷へ。13時半から、宝塚花組公演「アルカンシェル」の大千秋楽公演かつ柚香光ラストデイのライブビューイングを見た。劇場すぐ隣の映画館とあってチケットは完売。今回はちょっとお高い席を取ったのだが、そっちにして大正解だった。椅子はクッションが効いているし、荷物置き場はあるし、隣の席と半個室っぽく区切られているのでリラックスして見ることが出来た。プレミアムシアターというだけあって、スクリーン自体がIMAXかと思うくらいの広さだったし音も最高。福岡も場所によっては設定があるみたいなので、次回行くときはこれにしたい。
 大千秋楽とあって、みんな昨日より更に熱を帯びた演技で本当に素晴らしかった。兵庫公演の初日と同じ話を見ているとはとても思えない完成度。よくぞここまで……という気持ち。語り手役の聖乃あすかさんは最初からずっと目が潤んでいて、ナウオンステージで柚香さんの退団について話し出した途端ボロボロ泣き出したほのかちゃんを思い出した。
 ライブビューイングも含めると9回見た(新人公演の配信も含めれば10回)のだが、今日が一番良かった。れいまどのデュエットダンスは今日で見納めなんだと思ったら、本編後のレビューからもう感極まってしまう。パレードの最後、大羽根を背負って大階段を降りてきた柚香さんが、いままでに聞いたことがないようなロングトーンで主題歌を歌いきりオケがその歌唱にぴったり合わせた演奏をしているのを見て、ここに来てまだ進化するのかよすごすぎるだろうと思った。その意気を受け取って演奏で返すオーケストラもすごい。サヨナラショーが終わって、退団者がひとりひとり大階段を降りて挨拶をしていく。みんな清々しい顔をしていてすごく良かった。柚香さんの退団挨拶はほぼ武士だった。きらきら武士。
 自分はもっと泣いたりするのかなと思っていたのだけれども、れいまどの「柚香さん、来世もよろしくお願いします」「でもわたし来世はもずくかもしれないよ?」「もずくでも探し出します」「そうなの?こわい!というかなんでもずくって出てきたんでしょう。自分でも分からない。主題歌であれだけ『たゆたえども沈まず』って言ってるのに、沈んでたゆたってるのはまずいなあ」(台詞はニュアンスです)という漫才みたいなやりとりに大いに笑わされてしまい、寂しくなる暇がなかった。れいまどが大好きだ。

終演後、侑輝さんファンのONさんとクリエ前で落ち合い、ちょっとだけご挨拶をした。劇場前が人でごったがえしていた。警備員がいるので、ある程度整列はしていたけれども、すごい熱気。ONさんはみんなが何を待っているかは分からないけど、出待ち列だと思うので待ってみると言われていた。わたしはフェアウェルのサテライト会場に向かわなくてはならないので、劇場前でどこかでまた!と言い合って分かれた。雑踏の中で、観光客から英語でこれはなんの行列か尋ねられた人が「oh!タカラヅーカー、スター、来る!」みたいなことを言っているのが聞こえて笑った。わたしも絶対ああなるわ。

 その後は山手線に乗って品川へ行き、柚香光さんのフェアウェルパーティをサテライト会場で見た。パーティの内容はレポート禁止ということなのでここには記さない。お友達各位は直接聞いて欲しい。海水をかぶって顔が痒くなったりりしたが、盛りだくさんですごく楽しかった。フェアウェルが終わったのが23時ちょっと前。席が隣り合ってパーティの間ちょこちょこ話していた60代くらいの女性ふたり組と今日はありがとうございましたと言いあってお別れし、品川駅から浅草線で宿に。一階のコンビニで全身真っ白な人とすれ違い、今日は良い日でしたねと確認するかのように会釈を交わした。チェックインしたところ部屋がグレードアップされていてラッキー。スカステをつけるとちょうど柚香光サヨナラ特番がはじまったので、それを流しつつハーゲンダッツのアイスを食べ、シャワーを浴びて2時ちょっと前までスカステを見てから寝た。体はくたくただったが、勢いで来て本当に良かった。

舞台「オデッサ」

 WOWOWで録っていた三谷幸喜の「オデッサ」を見た。 タイトルだけ聞いてウクライナのオデーサの話かと思っていたら違 った。舞台は1999年のアメリカ、テキサス州オデッサ。 ロシアからの移民が故郷の景色に似ていると、 この名前をつけたらしい。  

登場人物は3人。 英語しか話すことのできない日系人カチンスキー警部( 宮澤エマ)、語学留学中の日本人青年スティーブ日高(柿澤勇人) 、英語が話せない日本人旅行者、コジマカンタロウ(迫田孝也)。  コジマは、 老人が殺害され現金を奪われた事件の容疑者として勾留されたが、 英語が話せず取り調べができないため、 スティーブ日高が通訳のために呼ばれた。  

警察署員の多くは、まだ犯人が捕まっていない連続殺人事件( 現時点の被害者は17人) の捜査に追われており人手も場所も足りないため、 生活課のカチンスキー警部が署内ではなくダイナーでコジマの取り 調べを行うことになった。  

カチンスキー警部とスティーブ日高の台詞は大半が英語。( 宮澤エマと柿澤勇人2人だけのシーンになると、 英語で会話している設定ではあるが日本語で台詞を喋る) 2人が英語の台詞を喋るシーンでは後ろのスクリーンに日本語字幕 が出る。また、 コジマが鹿児島弁を喋るシーンでもところどころ字幕が入った。 スターウォーズのオープニング風に字幕が流れたりと、 フォントで遊ぶシーンも多数あって面白かった。  

日高は語学留学中ではあるが、通訳を務めるのは初めての素人。 話しているうちにコジマが自分と同じ鹿児島県出身ということが分 かり、親近感から彼を助けてやろうとする。 カチンスキー警部が日本語が分からないのをいいことに、 彼女が話していることをそのまま訳すのではなく、 コジマに有利になる情報( 殺人容疑をかけられているので黙秘した方がいい等) を日本語で伝えだしたのだ。ところが取り調べがはじまった途端、 コジマは老人を殺したのは自分なので逮捕してくれと言い出した。 日高は、コジマがやっていない罪を認めようとしていると思い、 カチンスキー警部にコジマが話すことを歪めて伝え出す。  

英語しか喋れない警部と、私情に流されまくる語学留学生、 日本語と鹿児島弁のバイリンガルである日本人旅行者。 この3名の取り調べの行き着く先は、 事件の真犯人は一体どこにいるのか……みたいな話。  

設定を言葉で説明するとものすごくややこしい話に思えるが、 脚本がよくできているのと、 字幕を出すタイミングが素晴らしいので、 混乱せずに話を楽しむことができた。 ネタバレをしたら台無しだと考えたのか、 SNSに流れていた感想が「sobaの話をしてくれよ!」 一色だったのも頷ける。  

宮澤エマは日本語と英語のバイリンガル迫田孝也は日本語と鹿児島弁のバイリンガルなので、 それぞれ英語と鹿児島弁の監修をしている。英語・日本語・ 鹿児島弁の3種類の台詞がある柿澤勇人が本当に大変そうだった。 コジマの語る内容を誤魔化すためにポエムを読んだり、 蕎麦打ちについて熱く語ったり、 雨の日に捨てられた子犬の真似をしたりとやる事がめちゃくちゃ多 い。台詞とわかっているのに、演技が自然なので、 みんな本当にリアルタイムで考えながら喋ってるんじゃないかと錯 覚しそうに。すごく面白かった。 キャナル劇場のチケットは取れなかったので、WOWOWに感謝。

 

ミュージカル「この世界の片隅に」

2024年5月11日(土)晴  

いつもより少し早い時間に起きて家を出た。 オンラインチェックインをしようとしたら、 搭乗手続きが一時中止との表示が出たので、 空港についてすぐにカウンターへ。乗車予定の機体が、 エアコンの故障等で欠航になるかもしれないので別便への振替を行 っているとのこと。予定より40分早めの便を案内され、 バタバタと手荷物検査場に向かう。変更後の席は、 プレミアムクラスのすぐ後ろでかつ中央席だったので、 ガタイのいいビジネスマンに両側を挟まれて窮屈だった。 羽田空港に11時ちょっと前に着く。

今から移動すれば、 日生劇場でかたすミュが見られるかもしれないと思い、 都営三田線経由で日比谷へ移動。 東宝ナビザーブの残席は2階席のみだったが、 窓口で尋ねると5列目のセンターブロックが残っていたので迷いな くチケットを取った。   

12時45分から日生劇場で「ミュージカルこの世界の片隅に」 を見た。こうの史代の同名漫画を元にしたミュージカル。楽曲を、 10年間アメリカでミュージカルの作曲を学んでいたアンジェラ・ アキが手がけた意欲作。

5/11マチネのキャストは以下のとおり。

浦野すず/大原 櫻子

北條 周作/海宝 直人

白木 リン/桜井 玲香

水原哲/小野塚勇人

すずの幼少期/澤田 杏菜

黒村晴美/大村 つばき  

かなり傾斜のきつい八百屋舞台の真ん中に、 水平ではなく斜めに回る構造の盆があり、 舞台と盆の間にはひとが入れるくらいの隙間があり、 照明も仕込まれていた。 場面によってはその隙間に演者が入って演技していたので、 ちょっとヒヤヒヤした。  原作ですずさんが絵を描くシーンでは、奥のスクリーンに、 こうの史代のタッチで絵が描かれていく映像が写されるので、 原作の絵柄が好きな人間としてはこれだけでも胸が熱くなった。  原作は、 広島に住んでいた浦野すずが呉在住の北条周作に嫁いで過ごす日々 を、すずが子どもの頃から順を追って綴っていくのだが、 ミュージカルの脚本は、原作の20年7月(コミックス3巻) を始点として、9年1月から20年6月までのエピソードを、 すずさんが順不同に振り返る形式になっていた。 回想と現在が行ったり来たりするので、 この物語にふれるのが本当に初めての人は混乱しそうだ。  

オープニングの直後に呉の空襲シーンが来るものだからかなり面食 らったし、幕が開いて間もないこともあってか、 主演の大原櫻子が台詞を何度もつっかえていたのは気になったけれ ども、それもささいなことと流せるくらいに楽曲が良かった。 演者が語るように歌うのが作品の色と合っていたし、アンジェラ・ アキのメロディは合唱向きなのでコーラスの響きだけでうっとりし た。歌詞もすごく良くて、「降り注ぐ炎の雨 零れる赤い涙」など、 五感に訴える詩的なものが多くて大満足だった。

 最初に「かたすミュ」という略称を見た時に、 こんまりのミュージカルでもやるのかと思った勢なので、「 掘り出しもんみーつけた」という曲の「 いつか使える日が来ると後生大事にとってある」 という歌詞を聞いて笑ってしまった。    演者はみんな素晴らしかったが、特に周作の姉、 黒村径子役の音月桂に心を鷲掴みにされた。ソロ曲「自由の色」 で、語るように歌うことの理想系を見せつけられ、 涙が止まらなくなってしまった。すごいものを見た。

 1点だけ、 わたしは原作のなかでも水原哲というキャラがとくべつ好きなので 、彼の扱いはちょっと受け流せなかった。 20年7月からそれ以前にあったことを回想形式の枠中に、 水原さんが戦況の説明などをする役回りで登場するのだけれども、 そのなかで彼が、すずさんを自分の初恋の人だと説明したのである。はっきりいって無粋で興醒め。 要約すればそうだろうけど、 原作エピソードの丁寧な積み重ねを知っているだけになんて勿体無 いことをするんだろう。  

観劇体験として記録しておきたいのだが、 りんさんが、「 子どもはおったらおったで支えになるよね。困りゃあ売れるしね! 女の方が高いけえ世の中巧くできとるわ」 と言うシーンで、男性が1人、 引き攣れたような笑い声をあげていたのが耳についた。 ブラックジョークだから笑う人もいるだろうけど、 ほんとうにその人だけだったので、悪い意味で印象に残った。  

昼食をとっていなかったので、開演前と幕間に、 まい泉カツサンドを2箱ぺろっと食べてしまった。 脳が糖を求めていた。

 

ミュージカル「VIOLET」

アフタートーク回を見た時に、原田優一さんから感想とかをネットに流してね!と言われたのをふと思い出したので投稿します。

 

 博多座の発券機でチケットを手に入れてから中洲川端商店街を通ってキャナルシティへ向かう。複数のどんたく隊が商店街を練り歩き「ぼんちかわいやねんねしな」を歌っていた。新しいパン屋が出来ていたので、いくつか購入して移動。

 12時と16時からキャナルシティ劇場でミュージカル「VIOLET」を見た。バイオレット役は、12時が三浦透子、16時が屋比久知奈。
 「VIOLET」の舞台は1964年のアメリカ南部。公民権法が制定された後、アメリカがベトナム戦争に本格介入する直前の話だ。「ヘアスプレー」「ドリーム・ガールズ」「ミス・サイゴン」とこの時期のアメリカを舞台にしたミュージカル作品は多い。
 父子家庭に育った主人公の白人女性バイオレットは幼い頃、不慮の事故で顔に大きな傷を負う。父親の使っていた斧の刃が飛んで顔に当たったのだ。3年前に父とも死に別れたバイオレットは、テレビ伝道師に顔の傷を治してもらうために、長距離バスで旅に出る。その過程で黒人兵士フリック、白人兵士モンティと仲良くなる。彼らや他の乗客との出会いにより、バイオレットは少しずつ変化していく……みたいな話。
 肌の色の違いが大きく主題に絡んでくる話だが、キャストにネグロイドはいない。当然のことだが、黒塗りメイクはなし。演出家の藤田俊太郎は、ラグタイムではこの問題を衣装の色合いで区別していたが、今回は冒頭で黒人役を演じる役者3人が舞台上に現れ(台詞は発せずマイムで演技)、その上に実際の黒人解放運動の映像を投射していた。これがあったのと、作中では白人から黒人に対する様々な差別が描かれるので混乱はしなかった。なお、バイオレットは顔に大きな傷がある設定だけれども、演者の顔に傷メイクはされていない。
 舞台装置は真ん中に盆がひとつあり、ここがバスの車内となり、ホテルの一室となる。大掛かりなセットはそこまでなかったが、ところどころで映像が印象的に使われていた。脚本では、25歳のバイオレットの旅と並行して、幼いバイオレットと父親の過去のやり取りが描かれる。

 バイオレットは、顔のことで深く傷ついているので、あらかじめ言われるであろうひどい言葉を想像して現実に備える悪癖を持っている。自己防衛がいきすぎて、はたから見れば自意識過剰にとれる発言をしてしまうくらいだ。差別される気持ちは分かるから、あなた(黒人のフリック)のことも分かると言ってしまったり、自分のなりたい顔を上げていく過程で、黒人と顔を入れ替えてどうするのと漏らしてしまったりと、悪気はないもののやらかすシーンが多いので肝が冷えた。自分が実生活で彼女と同じことをしていないと言い切れないあたりが怖い。三浦透子は声がハスキーでかなり落ち着いた雰囲気で抱擁力があった。屋比久知奈はハリのある明るい声なのでカラ元気を出しているように見えた。

 東啓介演じるフリックは日常的な差別に傷ついているが、殆どのことを受け流す度量を持っている。それだけにあるシーンで激昂するさまが切なかった。立石俊樹演じるモンティは子どもっぽいところが憎めなくて良かった。彼は白人だが裕福ではないので、黒人のフリックが置かれた立場を理解していて、怒れないフリックの代わりに周りに毒を吐いたりする。いいコンビ。
 この3人のキャラクターが三角関係になったりするのだけれども、バイオレットのキャストが変わると3人の雰囲気がガラッと変わるものだから面白かった。三浦透子回はどこか静かでそれぞれの心情がじわじわ伝わる感じ、屋比久知奈回は、もっと輪郭がくっりしてしていてロマンス要素を強く感じた。立ち位置や細かい部分での動作が違ったり(三浦バイオレットは自分の連絡先の書かれた紙をフリックから取り返したが、屋比久バイオレットは、取り返す前にフリックが紙を握りつぶして床に捨ててしまうので取り返すことができなかった。後者の方がフリックの独占欲を強く感じた)していたので、続けて見て良かったと思う。
 アクの強いテレビ伝道師役は原田優一。テレビのゴスペルショーシーンの顔芸が壁全体にデカデカとリアルタイムで投射されるのがめちゃくちゃ面白かった。見た目がものすごく胡散臭いのでバイオレットが傷つくようなひどいことを言わないだろうかと心配に思いつつ見ていたのだけれども、かなりまともなアドバイスをしていて、見た目で判断してすみませんでしたという気持ち。小さなトラックから伝道を始めて、最初は本当に奇跡が起こせたし、KKKとも戦ってきたが(彼の聖歌隊には黒人歌手がいる)、今の自分は疲れ切っていると吐露するシーンは辛かった。
 一番泣かされたのは、バイオレットの父親役のspiの演技。起こったことは変えられないけれども娘が1人で生きていくためにできることをしてやりたいという不器用な親心がひしひし伝わってきた。声の厚みが素晴らしかった。
 谷口ゆうなとsaraのブラックミュージック歌唱も素晴らしくて魅了されたし、樹里咲穂の芸達者ぶりにも圧倒された。少数精鋭。

 マチソワの間に、目が腫れていないか気にしつつサイゼリヤでサラダとラムステーキを食べた。食事を終えて外に出ると、聞き覚えのある歌声が噴水広場いっぱいに響いていて、張り紙を見ると山崎育三郎がアルバムのプロモーションで来ているらしかった。ちゃんと見られる場所へは整理券がないと入れないので何も見えなかったけれども、得した気分。

 

舞台「千と千尋の神隠し」

2024年4月28日(日)晴のちくもり
 夕方、身支度をして外出。17時から博多座で「舞台 千と千尋の神隠し」を見た。すごかった。
 昨日見た「カムフロムアウェイ」は、本来ならば小さな劇場・少人数でやるような演目を1500人収容の大ホールでやっていて演目と劇場サイズのチグハグさを感じたのだけれども、「千と千尋の神隠し」は、これぞ大劇場でかけるべき作品というところを見せつけてくれた。まず盆がバカみたいにでかい。舞台前方のギリギリのところまで油屋のセットが来るような作りになっている。
 博多座は歌舞伎がかかることもある劇場なので、もともと客席内に小さな提灯がずらっと設置してあるのだが、油屋が登場したシーンでその提灯にあかりが灯るだけで期待感が高まった。
 ジブリファンの子どもが見に来ることを想定してか、(原作とかけ離れたものが出てくると、保護者に尋ねる人が増えそう)演者はアニメ版に声を寄せて演じているように見えた。油屋の建物自体には色味がなく、お客さんを迎える表と裏はほぼ同じ色味。その代わりに衣装がたいへん豪華だった。神様方の衣装どれも綺麗だったなあ。
 作中に出てくる龍や鳥などの空飛ぶものたちについては、サイズ違いのパペットをたくさん作り、それをきっちり決められたタイミングと軌道で動かすことでアニメーションの遠近法表現風の効果を出していてすごく面白かった。フライングができる劇場ならそれこそ実物大のものを使って客席側に飛ばすこともできると思うのだが、舞台ならではの嘘をつかってアニメーションを再構築しているのが良い。映像を使っているシーンはかなり少なかったし、それも風景や水のイメージ映像と紙吹雪くらいで、映像内にキャラクターは出てこなかった気がする。
 龍のハクが千尋の部屋に突っ込んできて部屋の中が人型でいっぱいになるシーンや、釜爺のとこに龍のハクが飛び込んできてのたうち回るシーン、湯婆婆を筆頭に翼あるパペットの羽の動きの美しさや、どんどんデカくなるカオナシの胴体部分の演者の動き、単体のカオナシの動きの気味悪さ、歩く街灯のダンスのキレ、ドンピシャで入るかなり手数の多いSE、生音ならではのBGMの美しさとボーカルとのバランスの良さと、見どころがありすぎて面白かった。2次元作品の舞台化とひとことででいってもいろんな方法がある。
 わたしの前の列には、母子2組(4人で来てるみたいだった)が座っていたが、何回かお母さんに話しかけたり伸びをしたりしていたけれども、前のめりになるでも無く大人しく見ていて、えらいなと思った。小さい時にこの作品を見られるだなんて羨ましい限り。

 

ミュージカル「カムフロムアウェイ」

2024年4月27日(土)くもりのち晴

 12時から久留米シティプラザグランドホールで「カムフロムアウェイ」を見た。実話をベースにしたミュージカルで、出演者12人で100人以上の人物を演じるという意欲作。公式サイトのあらすじは以下のとおり。

「2001年9月11日、ニューヨークで同時多発テロ事件の発生。アメリカの領空が急遽閉鎖された。目的地を失った38機の飛行機と7,000人の乗客・乗員たち。行き場のない38機の飛行機は、カナダのニューファンドランド島のガンダー国際空港に降り立つ。
カナダの小さな町。わずか1万人の人口は一夜にして約2倍となった。人種も出身も様々な人々はこの地でどんな5日間を過ごし、飛びたつのか―」

 役者が12人だけなので、各々がガンダーの街の人たち、いろんな出自の飛行機の乗客、飛行機会社の人間、動物愛護組合の人間などを演じていくのだけれども、練られた脚本と演出のおかげで、見ている側が何がどうなっているかを見失うことはない。(演者はものすごく大変だと思う。)
 隣の席のおじさんは途中からずっと泣いていた。人間の善性を信じたくなるような作品なのでそれも納得。
 ガンダーの街の人たちは、突然行き場をなくした乗客たちに不便がないようにありったけの物資を集めて待っていたが、乗客たちが一番必要としたのは電話(つまりは人との繋がり)だったというくだりや、消防士の息子と連絡が取れない母親を励まし続ける避難所のリーダー、航空会社発の女性機長になるために努力を重ねたのに、自分の愛する飛行機を爆弾にされたと嘆く機長と、印象的なシーンが目白押しだった。言葉の通じない人たちを落ち着かせるために、彼らが持っていた聖書のフィリピの信徒への手紙第4章6節を指差して意思の疎通を図るシーンを見て、これが日本で起きたとして、なにか代わりにできるようなものがあるだろうかと考えてしまった。見た目だけで警戒され差別的な扱いを受ける中東系のキャラクターが、声を荒げて抗議するようなところがないのは気になったけれども(騒ぎ立てるとかえって悪い立場に置かれると考えてのことかもしれないが)、ものすごく面白かった。
 キャスト陣が、宇垣美里氏いうところのミュージカルアベンジャーズ的な豪華メンツであることも手伝って、100分間とは思えない充実した観劇体験となった。座組が豪華すぎるせいか、大きな劇場でばかりやっているけれども、再演があるのならガラッとキャスティングを変えて、狭めの箱でやっているところも見てみたい。なかなか日本では興行として成り立たないのかもしれないけれども。

 終演後も作品の余韻がすごかったので、グッズを買うかひとしきり悩んでウロウロした後、暑かったのでホール裏の商店街にあるお店でソフトクリームを食べていたら、向こうからでかい男2人が歩いてきて、よく見なくてもさっき舞台上にいた加藤和樹と吉原光夫だった。悪いとは思いつつそちらをじっと見てしまった。たぶんマチネの前にラーメンを食べに行くんだろうな……などと考えていたら追っかけてきた女性たちがスマホを構えていて、それはちょっとダメなのではと思った。

 すごく良かったのでソワレも見て帰ろうかなんて思ったけれども、体がけっこうしんどかったので大人しく帰路へ。途中でご飯を買って、家についてから食べた。カムフロムアウェイの番宣ラジオや関連ドキュメンタリーを見ていたらあっという間に時間が過ぎた。風呂に入って寝た。